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成功思考by 成功の名言編集部

「穴の中にいると気づいたら、最も大切なのは掘るのをやめることだ」ウォーレン・バフェットに学ぶサンクコストを手放す損切りの思考法

やめたほうがいいと分かっているのに続けてしまう人へ。バフェットの言葉を手がかりに、コンコルドの誤謬やサンクコストの実験研究から「掘り続けてしまう心理」を解き明かし、穴から出るための四つの問いを具体的に紹介します。

深い穴から伸びる梯子と、地上に差し込む暖色の光を描いた、撤退の決断を象徴する抽象イラスト
成功への道をイメージした視覚表現

「穴の中にいると気づいたら、まず掘るのをやめよ」

ウォーレン・バフェットが株主への手紙などで繰り返し引いてきた言葉に、こんな一節があります。「穴の中にいると気づいたときに最も大切なのは、掘るのをやめることだ」。もともとは「穴の第一法則」として英語圏で古くから知られていた警句で、バフェットはこれを投資判断の文脈に持ち込みました。

単純すぎるほど単純な話に聞こえます。ところが現実に穴の中にいる人は、まず掘るのをやめません。むしろ、掘る速度を上げます。損を出した銘柄をさらに買い増す。うまくいかない企画に人員を追加する。合わない相手との関係に、さらに時間を注ぐ。

興味深いのは、バフェット自身がこの罠を経験している点です。彼が投資会社の名前として残したバークシャー・ハサウェイは、もとは斜陽の繊維会社でした。彼は後年、この繊維事業に見切りをつけるまでに長い時間をかけたことを、自分の大きな判断ミスとして繰り返し語っています。掘るのをやめるのは、それを言葉にできる人にとってさえ難しいということです。

なぜ私たちは掘り続けてしまうのか——サンクコストの罠

経済学が示す合理的な判断基準は明快です。すでに支払ってしまい取り戻せない費用(サンクコスト=埋没費用)は、これからの判断に含めてはならない。判断材料は「これから先に得られるもの」と「これから先に支払うもの」だけです。

しかし人間はそう動きません。心理学者ハル・アーケスとキャサリン・ブルマーが1985年に行った有名な実験では、劇場のシーズン券を定価で買った人と、無作為に割引で買った人を比べたところ、定価で買った人のほうが、その後の公演に多く足を運びました。観劇から得られる価値は同じはずなのに、支払った金額が行動を変えてしまったのです。

国家規模でも同じことが起きます。採算が見込めないと分かってからも開発が続けられた超音速旅客機の事例は、「コンコルドの誤謬」という名前で呼ばれています。組織でも個人でも、私たちは「ここまで払ったのだから」という理由で、これから先の損失を選び続けてしまいます。

「今日から始めるとしても、同じ選択をするか」

サンクコストが厄介なのは、それが感情ではなく理屈の顔をしてやってくるからです。「もったいない」は、一見すると節約の発想に見えます。しかし実際には、すでに失われたものを守るために、これから使える時間とお金を追加で失う選択になっています。

この錯覚を破るのに最も効くのは、判断の基準点をずらす一つの問いです。「もし今日、この状況をゼロから始めるとしたら、自分はこれを選ぶだろうか」。

この問いは、過去の投資額を計算式から外してくれます。三年続けた仕事も、半分読んだ本も、五年住んだ部屋も、この問いの前では等しく「今日から始めるかどうか」に還元されます。答えが明確にノーであるなら、続ける理由は未来の価値ではなく、過去の支払いだったということです。

撤退を難しくするもう一つの力——一貫性への欲求

サンクコストだけが原因なら、話はもっと単純でした。実際にはもう一つ、社会的な力が働いています。人は自分の過去の宣言や決定と一貫していたいという強い欲求を持っています。

組織心理学者バリー・ストウとハ・ホアンが、プロバスケットボールのドラフト指名順位と選手の出場時間を分析した研究があります。実際のプレー成績を統計的に考慮してもなお、上位で指名された選手のほうが長く起用され、チームに残り続ける傾向が見られました。「この選手を上位で選んだ」という組織の過去の判断が、その後の運用を歪めていたのです。

個人でも同じです。人前で「これをやります」と宣言した企画ほど、撤退が遅れます。やめることが、能力の否定や、周囲への裏切りのように感じられるからです。この感覚がある限り、いくら数字を並べても人は穴から出られません。ですから撤退の設計には、損得の計算と同じくらい、「やめることの意味づけ」を変える作業が必要になります。

つまらない映画を最後まで観てしまった夜のこと

少し個人的な話をします。あるとき、開始三十分で「これは自分には合わないな」と思った映画を、そのまま最後まで観たことがあります。途中で何度か席を立とうかと考えたのですが、そのたびに「ここまで観たのだから」と思い直しました。誰にでもある、なんでもない夜の出来事です。

帰り道に気づいたのは、自分が守ろうとしていたのは最初の三十分だったということでした。そして守るために、残りの九十分を差し出していた。三十分はどう転んでも戻ってきません。にもかかわらず、それを取り戻すつもりで、はるかに大きなものを追加で支払っていたわけです。

それ自体はごく小さな出来事です。ただ、そのとき「同じことを、もっと大きな場面でも自分はやっているのではないか」という嫌な予感がしました。読み進められない本、続ける理由が思い出せない習い事、いつのまにか義務になった付き合い。どれも「もったいない」という一言で延命されていた気がします。以来、途中でやめるかどうか迷ったときは、「私はいま、過去を守るために未来を払おうとしていないか」と自分に聞くようにしています。

穴から出るための四つの問い

第一の問い。「今日ゼロから始めるとしても、これを選ぶか」。先ほど触れた基準点の切り替えです。判断が鈍ったときは、まずこの一問だけを紙に書いて答えてください。

第二の問い。「続ける理由は、未来の価値か、過去の投資か」。理由を書き出し、一つずつ「これは未来の話か」と確認します。「ここまでやったから」「時間をかけたから」で始まる理由は、すべて過去の話です。それらに線を引いて消したあと、残った行がいくつあるかを見ます。ゼロなら、答えは出ています。

第三の問い。「どこまで悪くなったら撤退するかを、先に決めているか」。人は渦中では判断できません。だから始める前に、金額・期間・状態のいずれかで撤退線を引いておきます。「三か月やって指標が動かなければ止める」といった一行があるだけで、穴の深さが有限になります。

第四の問い。「同じ状況の他人に、自分は何を勧めるか」。研究でも、自分ごととして考えるときより、他人の問題として考えるときのほうが、人はサンクコストの影響を受けにくくなることが知られています。友人から同じ相談を受けたと想像して、その助言を自分に適用してください。

やめることは諦めることではない——今日、自分の穴を一つ書き出す

撤退が苦しいのは、それが「負け」に見えるからです。しかし穴の比喩が優れているのは、掘るのをやめることが目的ではないと示している点にあります。目的は地上に戻ることであり、掘るのをやめるのはその最初の一歩にすぎません。

資源の観点から見れば、やめる判断とは配分の変更です。撤退した瞬間に、そこへ注いでいた時間・お金・注意が丸ごと手元に戻ってきます。そして戻ってきた資源は、成果の出る場所に移せます。バフェットが繊維事業から資本を引き上げ、他の事業へ振り向けたことで、あの会社は今の姿になりました。やめる力とは、資源を殺す力ではなく、生き返らせる力です。

もう一つ言い添えると、早く撤退できる人は、実は多くのことを試せる人でもあります。撤退が下手な人ほど、一つの失敗が長期化するため、次の挑戦に着手できません。損切りの技術は、挑戦の回数を増やすための技術でもあるのです。

最後に、今日できることを一つだけ提案します。紙を一枚出して、「本当はやめたほうがいいと分かっているのに続けていること」を三つ書いてください。仕事でも、人間関係でも、買ってしまったサブスクリプションでも構いません。

それぞれの横に、「今日ゼロから始めるなら選ぶか」をイエスかノーで書きます。ノーがついた行のうち、最も損失の小さいもの一つから手を離してみてください。いきなり大きな穴から出る必要はありません。小さな撤退を一度成功させると、「やめても世界は終わらない」という実感が残り、それが次の判断を軽くします。

手にしたシャベルを置くのは、敗北の合図ではありません。空を見上げ、梯子を探し始めるための、最初の動作です。

この記事を書いた人

成功の名言編集部

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